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2011年11月

2011年11月28日 (月)

「ガラスの盾」担当部分

ぽにょっ会で翻訳している、キム・ジュンヒョク短編集「楽器たちの図書館」。
今回は5番目の「ガラスの盾」です。

私の担当部分は、169ページ19行目から175ページ10行目。ネット新聞のインタビュー場面でした。
地下鉄の中で、プラスチックの剣と盾でチャンバラごっこをする主人公とM。インタビューに、冗談でもっともらしく答える彼ら。なかなか面白いところです。

以下、悩んだところ、気になったところです。

○171、172ページ 췌췌엥, 췌엥
チャンバラの音ですが、剣を戦わせる音って、どんな擬音になるのか・・・。
そのまま近いカタカナにすると、チェチェーン、チェーン、でしょうが、何か、剣の音って感じがしません゚(´O`)°
もうちょっと硬い感じかな、と思い、カーン、にしたのですが、これもしっくりきません。
おもちゃの音だから、チェーン、でもよかったかな、と後から思いました。

○173ページ7行目
ブルース・ナウマンって初めて聞く名前なので、調べたところ、有名な現代アーティストだそうですね。
The True Artist Helps the World by Revealing Mystic Truths - 「真のアーティストは、神秘的な真実をあかすことで世界を救う」と書かれたネオンサイン(1967年)は、代表作だそうです。

신비한 진실 と、신비하다(神秘だ)という形容詞があるんですね。日本語だと「神秘的な」、と~的をつけますよね。
日本語では「~的」をつけない形容詞・形容動詞が、韓国語では~적 になることが多く、たとえば、정상적[正常的](正常だ)とか。「マニュアル・ジェネレーション」に出てきましたね。
でも、これは反対。こんなこともあるんだ~、と面白いです。

○173ページ 下から4行目
워낙 실패를 자주 하다보니 거기에서 실이 풀려나온 것 같다
「もともと失敗をしょっちゅうしていたら、そこから糸がほどけ出てきたようだ」直訳です。
いまいち、言いたいことがわかりません。冗談で答えた、とあるので、なんか引っ掛けの冗談なのでしょうが、どういうことか・・・。

○174ページ4、6行目 이벤트
「イベント」ですが、日本語でいう「イベント」は大がかりな催しみたいなイメージです。冗談交じりの会話なので、
あえて使っているのかもしれませんが、それにしても「イベント」のままでは、なんかおかしい感じ・・・ε-( ̄ヘ ̄)┌
「パフォーマンス」のほうがしっくりくる感じがするのですが、別の箇所で 퍼포먼스 という単語も使っているので、ここは違うのか、と。
こんな外来語も、それぞれ、日本語、韓国語の中で微妙に意味や使われ方が変化していて、ずれが生じていることがあるので、案外難しいです。

○174ページ12行目  
제대로 된 사람을 뽑을 생각이라면 5분은 기다릴 줄 알아야 되는데 말이죠.
直訳「ちゃんとした人を選ぶ考えなら5分は待てなくてはいけないのに、ですよ」 → 「まともな人を採用しようとするなら、5分くらいは待てなくてどうするって話ですよ」
どや訳、てほどでもないですが、最後の 말이죠 のニュアンスをどう訳出するか悩んで、こんなふうにしてみました。どうでしょうか?

○全体によく出てくる単語
실, 밧줄, 끈 。  それぞれ代表的な訳は、糸、綱、紐、ですが、これもそれぞれの日本語が指すものと、韓国語が指すものが、微妙にずれているのかも、と思いました。
私は「糸」というと、縫い物に使う細~いものを思い浮かべます。面接官の前でほどいてみせたり、地下鉄の中で床を這わせたり、という場面を考えると、「糸」では細すぎてよく見えないのでは?と思います。
かさがたくさんある、という箇所もあったので、私のイメージは「毛糸」でした。
「毛糸」は 털실 ですが、もしかして 毛糸を単に 실 とも言うのか。。。調べてみたけど、よくわかりませんでした。
彼らが持っていた 실 の太さ、材質が気になります。

みなさんは、どんな「糸」を思い浮かべていたのでしょうか?

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2011年11月15日 (火)

第二言語習得論

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岩波新書
白井恭弘「外国語学習の科学―第二言語習得論とは何か」

これを読みました。
言語学、心理学、認知科学などの成果を使って「外国語を見につける」という現象を解明し、ひいては効率的な外国語学習の方法を導き出す、「第二言語習得(SLA)」研究の現在を紹介する。
という、うたい文句に期待して読んでみました。

一言でいうなら、当たり前のことがほとんどでした。


母語を基礎に外国語は習得される。言語間の距離が遠いほど習得が難しくなる。
学習開始年齢が低いほど習得に成功する。母語のフィルター、母語の転移・干渉のため大人になるほど習得しにくい。
言語習得はインプットを理解することによって起こる。意識的な学習により正しさをチェックし、、繰り返し使うことにより自動化していく。
有効な方法の一つは、例文暗記。単語は文脈の中で覚える。大量のインプットと、毎日すこしずつでもアウトプットを意識する。発音は模倣から。
などなど・・・。
そんなこと、当たり前でしょう、と思ってしましました。

筆者はアメリカの大学で応用言語学を教え、第二言語習得(SLA)を研究する専門家。
アメリカでの研究の成果が中心なので、英語を母語とするアメリカ人が外国語を習得しようとする場合、あるいは、移民など英語を母語としない人が英語を習得していく場合、が研究の対象です。
実証研究の対象が大学生中心で、学生の母語と学ぶ外国語、その方法や環境などを比較検討し、様々な方法論を紹介しています。

しかし・・・
う~ん、「外国語学習」という現象そのものを対象とした学問、SLAというものが、まだこれからなのでしょうか。
筆者自身も、まだ発展途上の研究だと述べていますが。

とくに、音声認識について全く触れていないのは意外でした。
よく、「発音が難しい」と言いますが、それはほとんど、習得しようとする外国語と母語との音韻体系の違いに行き着くのではないでしょうか。
人間が発することの出来る音声は無数にあります。区別して数える、ということが不可能でしょうから、無数といってもいいと思います。
その中で、言語ごとに音声を区別して認識し、音韻体系ができます。子どもが母語を習得するということは、その区別を覚え音韻体系を身につける、ということだと思います。
言い換えれば、無数にある人間の音声のうち、母語にある音声以外の音は認識できなくなる、母語で区別しない音は区別出来なくなる、ということではないでしょうか。

発音する、ということは、発声器官を動かすということ。母語で使う発音は無意識的に発声器官を動かしています。
しかし、母語にない発音、区別できない発音をしようとすれば、発声器官の動かし方そのものを意識的に変えなければ出来るはずがないと思います。
母語のフィルター(カタカナ発音)を極力廃し、音韻体系の違いをしっかり認識し、発声器官の運動を訓練する。コレが重要だと、私は考えています。

この本の中で参考になったのは、「とにかくまずインプットから」ということ。
大量のインプットがあってこそ、アウトプットも可能になる。多量のインプット理解と意識的学習の自動化。これですね。

やはり、もっともっとたくさん韓国語の本を読んだり、聞いたりしないと。まだまだ全然足りない~(>0<)。。。

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2011年11月 6日 (日)

訓民正音

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昨年出版され、話題を呼んだ野間秀樹先生の「ハングルの誕生」。

私ももちろん読みました。韓国語という言葉そのものに関心のある人なら、この本の面白さ、凄さは誰もが感じるのではないでしょうか。
それほど、質・量ともにたっぷり充実した内容の大著です。

そして何より、野間先生の溢れんばかりのハングルへの情熱がほとばしる表現。いやいや、とにかく素晴らしいです。

先月には韓国語版が出版され、韓国でも新聞、テレビニュース等で取り上げられています。
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野間先生のHPをぜひ参照してください。


その「ハングルの誕生」の一部の文章が、今回のミレ韓国語学院の韓訳課題です。
終章「普遍への契機としての〈訓民正音〉」の部分。
大げさとも言える文語調の表現を、どんな韓国語で表すか・・・。

一言ごとに悩んでいます

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