「無方向バス」担当部分
ファンタジーなお話で、私はこの短編集の中でいちばん好きです。
担当部分は226ページ4行目ー229ページ11行目。
語り手の「僕」が、目撃者の話から“大きい本”に何かある、と確信するけれど、姉にわかってもらえなくてバスターミナルを眺めている場面まで。
気になったところ、困ったところなど。
①226ページ5行目 넋이 나간 사람처럼
넋이 나가다 のいい訳が見つからず、結局「魂が抜けたように」とほぼ直訳してしまいました。
「魂が抜けた人」とは日本語ではなんか座りが悪いというか、ピンとこない表現だと思います。
「ぼうっとした」くらいが近いのでしょうが、この場面ではそれも違うような気がして。
みなさんはどうされたでしょうか。
②228ページ7行目 "말도 안 되는 소리 좀 그만 해."
姉が僕のことばにあきれて言う台詞。
こういうのが難しいんですよね。
話者のキャラ、会話の相手との関係、場の雰囲気、などにマッチした日本語表現にするのが…。
「話にならないわ、いいかげんにして」と2文に分けてみました。
これもみなさんどう訳されたか気になるところです。
③229ページ7行目 빵, 하는 소리
バスの警笛の音って、擬声語でどういうんでしょう。
車のクラクションの音は「プップー」とかいいますよね。
バスの警笛はもっと大きくて高い音のような気がします。
「パーン」としたのですが、これだと何かが破裂した音のようで、いまいち。。。
ほかにも、気がついたところがあれば、ぜひ教えてください。
無方向バスに乗って行ってしまった母。
詳しくは書かれていないけど、僕は父のせいで母がいなくなったと思っている。
シン・ギョンスク「母をお願い」を思い出しました。
最後のバスの中の場面がいいですね。
会話の連続でふっと終わる。この余韻が好きです
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コメント
ひがなおさんも「大きい本」派ですね。
私はこの辺りを訳している時に、はっとして「大きな本」から「大きい本」に変えました。「大きな本」と訳すのに何となく違和感があったのですが、「大きい本」にしてからは自分なりにスッキリしたのです。
①ここは直訳の方がいいような気がします。まさに魂が抜けたように歩いていたのではないかと想像します。
②悩みました。「でたらめなこと言うのはもうやめなさい」としました。でも、ひがなおさんの訳ナイスです!
③は私も「パーン」です。パーンって聞こえますよね。
228-16の「不規則で掴みどころがない」はいいですね。
地球の果てまで行けるとか、バスを動物に見立てるとか、目に見えない道があるとか、そういう表現がとってもいいなと思う作品でした。
『ガラスの盾』も好きでしたが、私も『無方向バス』が一番かな。
すっと一読したときには変だな?と感じた作品ほど、じっくり翻訳しながら読むと好きになるような気がしました。
投稿: テラ | 2012年5月 8日 (火) 22:48
翻訳お疲れ様でした!
私の翻訳はぜんぜんお話になりませんが一応。
①「魂の抜けた人のように…」
②「話にもならないわ。」
③「パーン」
以前イベントに行ったとき、キム・ジュンヒョク氏ご自身が、バスの後部座席に座るのが好きだと言ったのを思い出しました。
「僕」が後部座席に座って…のあたりは、自分が「僕」になった気分で書いたのかなぁ~、オリジナルにはない部分なのかなぁ~って思いました。
ちょいちょい小説の「僕」の一部分に自分を少し重ねているような?
投稿: ふにゃ | 2012年5月 9日 (水) 21:57
>テラさん
そうなんです。「大きな本」と「大きい本」では何かが違いますよね。
私も「大きい本」のほうがしっくりくるんです。
「大きな本」では 큰 책 と分かち書きした単なる「大きな 本」て感じで、큰팩 とこの帳簿を指す固有名詞になったことばとしては「大きい本」のほうが近い感じがします。何がどう違うか上手く言えませんが…。
큰팩みたいになるべく短く言いたいけれど「デカ本」「大帳面」とかはこの家に合わない気がして、結局「大きい本」に。。。
テラさんのおっしゃる箇所、私もすごく好きなところです。
ほんと、じっくり翻訳しようとすると、じわじわと味が出るみたいに好きになりますね
投稿: ひがなお | 2012年5月10日 (木) 14:00
>ふにゃさん
コメントありがとうございます。
やはり①は直訳で違和感ないんですね。ふむふむ。
ジュンヒョク作家がバスの後部座席に座るのが好きとは、なんかわかるような気がします。
さいごの会話の場面をはじめに決めていたのかもしれないな、なんて考えました(o^-^o)
投稿: ひがなお | 2012年5月10日 (木) 14:04
こんばんは。
ステキな訳文で、拝借したいなと思う部分がいろいろありました。
P226の10行目
「僕は大きい本の大きさを大体このくらい、と両手で示して見せた。」
私の訳文はほぼ直訳。ひがなおさんの訳は、僕の動きが目に見えるようでとてもいいなと思います。
同最終行の정리の訳語「片付けて」
P228の14行目の버스들の訳語「バスが何台か」
などもいいですね。
①については、何の疑いもなく「魂が抜けた人」としました。
②は「バカみたいなことは言わないで」
③もそのまま「パーン」です。遠くにいると、バスのクラクションは「パーン」と聞こえるような気がします。
最後の会話の場面をはじめに決めていた、という考え、本当にそうかもしれませんね。
投稿: スミレレ | 2012年5月10日 (木) 22:03
>スミレレさん
コメントありがとうございます。
お褒めいただき嬉しいです(*^.^*)
①③はやはりこのままで皆さんすんなりくるんですね。自分の中のちょっとした違和感は何だったのか…。
②「バカみたいなこと」いいですね!
これからもよろしくお願いします
投稿: ひがなお | 2012年5月11日 (金) 08:55
今日は空気がきれいなのか、会社に来た時、富士山がうっすら見えました。
週末も晴れのようですし、みなさんよい週末が送れそうですね^^
昨日、録画しておいた「私たち結婚しました」を見ていたのですが、「넋이 나가다」が「魂が抜けた」って訳されていました。
やはり直訳しても大丈夫そうですね^^
投稿: ふにゃ | 2012年5月11日 (金) 12:48
>ふにゃさん
私の住む地方もよく晴れた一日でした。
が、風が強くて自転車はしんどかったです(;;;´Д`)
「魂が抜けた」はフツーの日本語表現なんですね!
自分の日本語感覚がズレてることがわかりました…( ̄○ ̄;)
ありがとうございました~
投稿: ひがなお | 2012年5月11日 (金) 21:06
こんにちは。ひがなおさんの訳は自然です~っと読めて素敵です。私は「大きな本」派だったのですが、ひがなおさんの訳を読んで「大きい本」の方がよかったかなと・・・ちょっと後悔。
①は「気が抜けた」と訳しました。ぼーっとした感じが出せるといいのですが、넋이 나가다は感じは分かるのですが、日本語に訳そうとすると難しいですよね。
②は「訳の分からないこと言わないで」としました。
③は「ブッツブー」と訳しました。バスのクラクションだとかなり大きな音になりますよね。
あと気になったのは、最初の方にある어림짐작해 보였다です。直訳的に「当てずっぽうに示した」としたのですが、ひがなおさんの「大体このくらい」という訳いいですね。メモメモしておきます。
投稿: asako | 2012年5月12日 (土) 12:02
>asakoさん
「大きい」と「大きな」。
テラさんが記事にされていたのでちょっと長いコメントしてきました。よかったら見てください(*´ェ`*)
①asakoさんは直訳しなかったんですね。私だけじゃなかった、とちょっとほっとしました。
②「訳のわからないこと」もいいですね!
③ 빵を「ブッツブー」とは大胆ですね。かなり大きい音だろうと想像します。
コメントありがとうございました
投稿: ひがなお | 2012年5月12日 (土) 23:17
ひがなおさんの訳とても自然です。
①私も同じくです
②会話を訳すのがとっても苦手なんです^^;
「話しにならないわ。やめて」
③パーン
投稿: ippoyo | 2012年5月13日 (日) 08:19
>ippoyoさん
コメントありがとうございます(*^-^)
同じ訳が多いんですね。安心しました。
これからもよろしくお願いします。
投稿: ひがなお | 2012年5月13日 (日) 13:30
テラさんの記事のコメントにも書きましたが、
「い」と「な」の違い、よく分かりました。
ありがとうございます
言葉を扱うときには、どんな小さなことにも
疎かになってはいけないんだなと痛感。
それから、自分がなぜその言葉を選んだかを
「なんとなく」ではなく、きちんと言えなくちゃ
いけないんだなぁと思いました。
投稿: スミレレ | 2012年5月13日 (日) 21:23
>スミレレさん
ことばと真摯に向き合う、て言うは簡単だけど実際しんどいですよね。
きりのない迷路に入ってしまいそうです。
そのことばを選んだ理由をきちんと言える…
難しいことだけれど出来る限り感覚を磨いて近づきたいと思います。
投稿: ひがなお | 2012年5月14日 (月) 18:39