浅川巧 日記と書簡
映画「道~白磁の人」を見てもっと知りたくなり、この本を読みました。
高崎宗司 編 「浅川巧 日記と書簡」 草風館
大正11年の1年間と大正12年の一部の日記。
そして昭和にかけて書かれた書簡。
まず、ほとんど毎日日記をつけていることに感心。
誰と会ってどんな話をして、こんな仕事して、何を食べて…と、マメに書いています。
よく友だちと会ってお酒を飲んで、飲み過ぎて記憶をなくした、とか。
教会などの人間関係が煩わしい、とか。
印象に残ったところ。
「従来の砂防造林やその工事には随分自然と縁の遠い仕方が多い。自然が告げた方法を実証してみたい。」
(結婚式に参列して)「法廷の宣告の様の処は変な気がした。自然の懐にあつて悦ぶ雀の結婚の様に、或いは水素と酸素が化合して水になる時の様に・・・自由の輝きがあつたら美しいと思つた。広い野原にでも出て二人きりで心行くばかりに祈つて唱つて結婚式をしたらどうだらう。」
「小役人を対手にするはいやになる。帰つて花壇を拵えて草花を植へて働いたら気持ちが軽くなつた。」
「朝鮮に来る旅行者に対する案内者の態度、案内者の朝鮮人に対する理解同情の程度に依つて、旅行者の観る朝鮮に大差が生ずるものらしい。今日の生徒等も美しい温かい朝鮮には触れずに過ぎるであらう。」
『美しい温かい朝鮮』・・・巧が美しく温かい白磁のような人だったから、彼にとって朝鮮は美しく温かかったのでしょうか。
友人の子どもや朝鮮人家庭の子どもと「遊んだ」という記述がよくありました。
これが、彼の人間性を表していると思います。
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コメント
本を読んでみようと、先週の金曜日にお気に入りの図書館に行ったのですが、浅川巧に関する本が1冊もなくて!
とってもおしゃれな図書館なのに・・・がっかり。
今度の水曜日に高校の近くの図書館に行って借りて来ようと思います。
その図書館にこの本はないみたいですけど、砂防に関する考え方なども先進的で興味深いです。
100年先を見ていた人なのかな。。。
投稿: テラ | 2012年7月 1日 (日) 23:16
>テラさん
ウチの近くの図書館でもこれはかろうじてあったけど、開架ではなくてやはり書庫にありました。
林業に関しては、製紙企業に対して「北海道も彼らによって裸にされた。樺太だってもういくらも余さないだらう。これからは鴨緑江からシベリアに見込みをつけているだらう」と批判もしています。
今の環境や生態系の問題を見通していたかのようです。
投稿: ひがなお | 2012年7月 2日 (月) 22:09
予約しました。明日は来ると思います。テラさん、ミアネ〜(^^;)。
日記って好きです。飾らないホントのところが見えるような気がします。
武田百合子の「富士日記」が大好きです。
投稿: ハーちゃん | 2012年7月 2日 (月) 22:39
>ハーちゃんさん
ハーちゃんさんはホント、読書家なんですね。
日記ってほんとに個人的な記述があるから出版する際にはいろいろ気をつけるんでしょうね。
この中にも、名前がイニシャルになってる人がいて、もともと巧がイニシャルで書いていたのか、否定的表現をしているので編集者が気を遣ってこうしたのか、気になったりします。
投稿: ひがなお | 2012年7月 4日 (水) 09:28
わぁ、読んでみたいです!
「自然の懐にあつて悦ぶ雀の結婚の様に、或いは水素と酸素が化合して水になる時の様に・・・自由の輝きがあつたら美しいと思つた。」がいいですね。
生き物すべて、あるがままが美しいと思ってらしたんでしょうね。
映画の中で、朝鮮の民衆の室内用便器(というのかな?正式名称を忘れてしまった)が白磁でブルーの模様が施されていて、それを浅川巧が愛おしそうになでているシーンがあるんです。生き物の営みすべてに愛情を持っていたんだろうなと、浅川巧の美の基本が分かるようで、とても印象に残っているシーンです。
投稿: スミレレ | 2012年7月 7日 (土) 22:45
>スミレレさん
そう、私もこの結婚式についての表現に、ロマンチックというか純粋というか、日記にこんなこと書く?と思わず突っ込んでしまいました。
ブルーの模様の室内用便器(?)ありましたね。先入観や偏見を持たずに自分が美しいと感じるものを愛おしむ…できそうでできないことですね。
投稿: ひがなお | 2012年7月 8日 (日) 22:08