ぽにょっ会

2017年4月26日 (水)

キム・ソル「ピカデリーサーカス界隈」

韓日翻訳ごっこの会”ぽにょっ会”では、昨年5月から「第15回黄順元文学賞受賞作品集」の中の短編を少しずつ翻訳しています。

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1作目は 손보미 '임시교사'

2作目 한강 '눈 한 송이가 녹는 동안'

3作目 강영숙 '맹지'

4作目 권여선 '이모'

そしてただ今5作目 김솔 '피커딜리 서커스 근처' を翻訳中です。

ロンドンを舞台に名前のある登場人物は3人だけ。

それぞれ台湾、ベルギー、シエラレオネからロンドンにやって来た若者3人で、イギリス人も韓国人も登場なし。

熱狂的なサッカーファン、麻薬中毒に近い若者、体内に秘密を隠して密航してきた者・・・

ピカデリーサーカスのマクドナルドで偶然出会った3人がその後どうなるのか。

イギリスのサッカー事情、アフリカとヨーロッパの格差、消費社会など、いろいろ考えさせられる面白い短編です。

プレミアリーグのチーム名、アフリカの国名など日本語表記の通例を調べるのが大変でした。

翻訳とは「調べる力」がとても重要だとあらためて思いました。


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2016年7月 7日 (木)

한강 "눈 한송이가 녹는 동안"

ただ今第3次ぽにょっ会で翻訳しているのは、この『第15回黄順元文学賞受賞作品集』

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5月から毎月少しずつ範囲を決めて、翻訳文を共有サイトにアップしています。

1作目は 손보미 "임시교사"  ソン・ボミ『臨時教師』

30ページほどの短編です。

正規教員になれないまま長年臨時教師として教職にあった独身女性が、若いプチセレブ夫婦にベビーシッターとして雇われ、その家族に献身的に尽くし・・・というお話です。

現代の韓国社会の一面を象徴するかのようなエリート夫婦の暮らしぶりや、善意のちょっとしたすれ違いなど、なかなかに興味深い内容でした。


第2作は 한강 "눈 한송이가 녹는 동안" 韓江(ハン・ガン)『雪ひとひらが溶けるあいだ』

第15回黄順元文学賞の受賞作です。

ハン・ガンといえば、先日韓国人作家として初めて国際ブッカー賞を受賞して話題ですね。


『菜食主義者』は日本語版を読みました。

Photo

じつは2年ほど前に読みかけたときは、つらくなって途中で読み進めなくなりました。

今回あらためて最後まで読んでみましたが、やはりつらいというか痛いというか・・・

人間の孤独と暴力、なにか根源的なものを突きつけられたような読後感でした。


しかし、この短編はある夜の死者との対話。

その合間に思いが過去へ行ったり来たりする、とても静かなお話です。

3回に分けて翻訳アップしていますが、7月はその2回目です。

とりあえずは最後まで訳していますが、もっとじっくり練りたいと思います。


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2016年3月11日 (金)

第15回黄順元文学賞受賞作品集

ぽにょっ会でこの春から翻訳することになった本です。

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제15회 황순원 문학상 수상작품집 第15回黄順元文学賞受賞作品集

ファン・スンウォン(黄順元)といえば短編『ソナギ(夕立)』で有名な韓国を代表する作家のひとり。

そのファン・スンウォンの名を冠した、中・短編対象の文学賞受賞作と、最終候補作9作が収録されています。

2015年の受賞作は、한강 の 눈 한송이가 녹는 동안
한강作家のインタビューなども掲載されています。

한강作家はすでにイサン(李箱)文学賞も受賞し、日本でも『菜食主義者』(クオン)など邦訳も出ている人気作家。
先日、国際ブッカー賞にノミネートされたと話題になりました。

最終候補作もそれぞれ中堅・若手の作家たちのようです。

これから1作ずつ自分なりに翻訳してみて、ぽにょっ会のみなさんと意見交換をしていきます。

楽しみです~( ^ω^ )

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2015年1月30日 (金)

『犬散男』とりあえず完了

ぽにょっ会で翻訳している「犬を散歩させる男」、とりあえず最後まで翻訳してしまいました。

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285ページの長編小説を、とにもかくにも自分なりに翻訳してみて、やればできる、と自信になりました。
もちろん本当の意味で翻訳と呼べるシロモノではありませんが・・・。

一人では難しかったと思います。
ぽにょっ会の仲間に感謝です。

やはり本一冊まるっと訳すと、わかること、感じることがあります。

私たちが使う言葉は、単語単位が意味するところはもちろんあるのですが、それが集まってセンテンスになり、テキストになったとき、単なる単語の集合体とは全く違うものになる、ということが実感できました。

詳しくはまたの機会に。

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2015年1月11日 (日)

ぽにょっ会の翻訳

韓→日翻訳勉強会(というか翻訳ごっこの会?)”ぽにょっ会”では今、チョン・ミンシク作家の長編小説「犬を散歩させる男」を翻訳中です。

2013年3月初めが第1回でしたから、もう2年近くになります。
ちょっとペース遅すぎですね。

でも月に1度少しずつメンバーの翻訳を見比べるのは、とても勉強になります。
ほほうなるほど、と感心させられます。

今回もなんとか今月の分をぽにょっ会サイトにアップしました。

細かいことを調べ出すとキリがないので、いつもまあこの辺で、とあきらめてエイヤっとアップします。

いいかげん仕上げてしまいたいので、できるだけ早いうちに最後まで翻訳してしまおうと思っています。

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2013年5月18日 (土)

「犬散男」第2章まで

「犬を散歩させる男」

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ぽにょっ会の第2回翻訳発表が終わりました。

メンバーのみなさんの訳文を見ていると、ほんの少しずつの日本語の使い方の違いがみられて、とても面白く興味深いです。

解釈を巡ってあれこれ意見を交わすのもとても楽しいです。

もっとどんどん訳していきたくて、先に進めています。
95ページ第2章の終わりまで行きました。

まだとりあえずの訳なので、当然発表前にはまた推敲しなければなりませんが。

この勢いでさっさと最後まで行っちゃいたいところですが、またまたハン検が近づいてきたので6月2日までは「犬散男」は休んで、トハギなどのチェックをして、試験対策をしようと思っています。遅すぎですが・・・


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2013年2月27日 (水)

「犬散男」とりあえず

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「개를 산책시키는 남자」(犬を散歩させる男)、今回の範囲24ページまではとりあえず訳してみました。

まだまだもっと練り上げないといけないし、どういう意味か、どんなニュアンスかよくわからない箇所もあります。

でもなんかすごく楽しい( ^ω^ )

上手く日本語にならなくて苦しみ、そもそも自分の解釈や感覚が果たして著者が表現したいことと合っているのか、自信がなくて悩み…。

でもなぜか楽しくてもっと翻訳したくなります。

雑事に追われ、なかなか時間がとれないのが残念です(´・ω・`)

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2013年2月14日 (木)

「犬散男」ようやく…

ぽにょっ会2で翻訳する「개를 산책시키는 남자 」(犬を散歩させる男)。

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じつはつい先日ようやく最後まで読み終え、翻訳に取りかかったところです(^^;)

読みながら頭の中で人物や場面を描いているので、ドラマを演出しているような気分になりました。

人生浮き沈みの激しい主人公や、ナゾの大金持ち、鉄面皮の執事、若くてかわいいヒロイン役、頼りになって理窟っぽい兄貴分、ゲイ疑惑の動物病院院長、人間を理解している?大型犬など、ドラマに出てきそうなキャラがいっぱいです。

最後はいまいち理解しがたい終わり方でしたが、これからじっくり付き合っていって丸ごと一冊訳し終えたら、きっと今とは違った感想を持つことでしょう。

ぽにょっ会のみなさんはもう翻訳が進んでいることと思います。
”개산남(犬散男)”、あと2週間余り、頑張ります


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2012年8月17日 (金)

調子はずれD 担当部分

キム・ジュンヒョク短編集「楽器たちの図書館」を一冊まるごと翻訳してしまおう、という「ぽにょっ会」。
ついに最後の一編です。

私の担当部分は、268ページ下から3行目から272ページ7行目。

語り手「僕」の会社にDが訪ねてきて、高校時代の話や無声映画の話をして、一緒に仕事をすることになるところ。

以下、気になったところ、難しかったところです。

①269ページ 4,5行目 정체

정체[正体]という言葉が3回出てきます。
これを含むところがすごく訳しにくかったです。
自分の正体、本分、真の姿、本当の自分みたいなもの。
普段の姿からはわからない、歌わない限り表面に出ない姿=この場合はDがとんでもないリズム音痴であること、だと思います。
でもぴったりくる表現を思いつけなくて…。
結局日本語にはならないのであっさりと「自分をわかってなかった」にしましたが。
みなさんはどうされたのか、気になるところです。

②270ページ下から4行目 자신이 알아낸 게 아니고 들어서 아는 거지.
들어서 아는 거지「聞いてわかるんだよ」 直訳では何を聞いてどうわかるのか、わかりません。
他人から「お前音痴だな」みたいな言葉を聞いて、自分が音痴だとわかる、という意味だと思います。
日本語で「~と言われる」という表現を、韓国語では「~라는 소리를 듣다」のように表現することが多いので、このように 들어서 ひと言で「他人に言われる」意味になるんだ、と再発見しました。
この解釈で合っているでしょうか?

③271ページ3行目 대가를 톡톡히 치렀지만
「対価をたっぷり支払ったが」 先生が生徒を殴った対価を支払う、とは懲戒のような処分を受けた、ということなのでしょうか?
具体的には何も書いていないので想像するしかないですが・・・。
Dはこの先生も招待したかったんじゃないかな~、なんて考えました。

④271ページ下から5、4行目 내 몫의 이름값을 충분히 챙길 수 있었고
이름값 は 이름에 알맞은 행동이나 노릇, 또는, 주위의 평판 때문에 치루는 대가 (名前にふさわしい行動や役割、または周囲の評判のために支払う対価)と、내이버 오픈사전 にあります。
これもそのままでは日本語になりにくいです。
外来語でネームバリュー?とも考えましたが、ちょっと違うような気がします。
「僕の分の 이름값 は充分に取りそろえることができる」 → 「僕の役割は充分に評価される」としましたが、
どうでしょうか?

⑤全体に何度も出てくる 공연 、공연기획
公演、コンサート、ライブ、日本語ではそれぞれ少しずつ違う感じがします。
会社の事業としては公演、企画するものはコンサート、バンドとしてはライブ、みたいな・・・。
語り手の僕もDも40歳近く、まだ若いので会話の中では「公演」より「コンサート」か「ライブ」が合う様な気がします。
「公演企画」は、事業計画書を作成するときに使う言葉のようで、会話の中では不自然だと思います。
기획 もたんに「企画」とすると、この場合ズレがあるような気がして、会話の中ではあえて「プロデュース」を使ってみました。
僕がDから奪ってやろうとしていた 공연기획 は、以後の内容からして「企画」というよりは「プロデュース」だと思うのですが。
ドラマの中で、日本でいえば芸能事務所にあたるところを 기획사 と言っているのを見たことがあります。

ちなみに、「公演企画」「コンサート企画」「ライブ企画」をそれぞれ完全一致で検索してみたところ、ヒット数は「ライブ企画」がいちばん多く、次いで「コンサート企画」、「公演企画」の順でした。
やはり「公演企画」は企画書の書き方とか、会社案内といったカタい文書がほとんどでした。

공연 、공연기획、などの言葉が表現する範囲・内容と、日本語の訳語が意味する範囲・内容がほんの少しずつズレてるんですね。
공연、기획 など範囲の広い言葉は、いつも同じ訳語と決めつけずに状況に合わせて、そこで表現していることを表す最も適切な日本語を選ぶことが大切だな、とあらためて思いました。


そのほかにも、お気づきの点があれば、ぜひ教えてください。

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2012年5月 8日 (火)

「無方向バス」担当部分

ファンタジーなお話で、私はこの短編集の中でいちばん好きです。

担当部分は226ページ4行目ー229ページ11行目。

語り手の「僕」が、目撃者の話から“大きい本”に何かある、と確信するけれど、姉にわかってもらえなくてバスターミナルを眺めている場面まで。

気になったところ、困ったところなど。

①226ページ5行目 넋이 나간 사람처럼
넋이 나가다 のいい訳が見つからず、結局「魂が抜けたように」とほぼ直訳してしまいました。
「魂が抜けた人」とは日本語ではなんか座りが悪いというか、ピンとこない表現だと思います。
「ぼうっとした」くらいが近いのでしょうが、この場面ではそれも違うような気がして。
みなさんはどうされたでしょうか。

②228ページ7行目 "말도 안 되는 소리 좀 그만 해."
姉が僕のことばにあきれて言う台詞。
こういうのが難しいんですよね。
話者のキャラ、会話の相手との関係、場の雰囲気、などにマッチした日本語表現にするのが…。
「話にならないわ、いいかげんにして」と2文に分けてみました。
これもみなさんどう訳されたか気になるところです。

③229ページ7行目 빵, 하는 소리
バスの警笛の音って、擬声語でどういうんでしょう。
車のクラクションの音は「プップー」とかいいますよね。
バスの警笛はもっと大きくて高い音のような気がします。
「パーン」としたのですが、これだと何かが破裂した音のようで、いまいち。。。

ほかにも、気がついたところがあれば、ぜひ教えてください。


無方向バスに乗って行ってしまった母。
詳しくは書かれていないけど、僕は父のせいで母がいなくなったと思っている。
シン・ギョンスク「母をお願い」を思い出しました。

最後のバスの中の場面がいいですね。
会話の連続でふっと終わる。この余韻が好きです

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